ご自身の発達障害を疑っている方はもちろん、発達障害を抱える方への接し方にお悩みの方もぜひ参考にしてください。少しでも「あなたの生きやすさ」と、そして「次の一歩」につながれば幸いです。

発達障害というと「子どもに特有の障害」と思う方も多いのですが、実は、「大人の発達障害」も珍しいものではありません。
大人の発達障害の概要!「発達障害」って?
「発達障害」とは、一言で言えば、「脳の機能の障害」です。
人にはそれぞれ個性があります。
のんびり、几帳面、マイペース、おだやか……。
個性の多様性は社会を豊かにするものです。
しかし、個性のために自分や家族・周囲の人たちが苦労するような状況が出てきたら、それは「発達障害」が関係するのかもしれません。
身体の機能と同じように、脳の中(心の中)にもいろいろな機能があります。
脳の機能(心の機能)のバランスにばらつきがある状態が、「発達障害」と呼ばれるものです。
もちろん、やはり身体と同じように、誰の脳の機能(心の機能)にも多少のばらつきはあります。
そのうち、ばらつきが非常に大きくて、社会生活を送る上で支援が必要になるものを「発達障害」と言うのです。
なお、発達障害には知的障害を伴うこともありますが、必ず伴うわけではありません。
非常に知能が高く、高学歴だったり知的職業に就いていたりする発達障害者も多くいます。
「発達障害」とはどういったものなのでしょうか?
大人の発達障害と子どもの発達障害と違い



発達障害は、「生まれつき」のものであり、大人と子どもで異なることはありません。
日本では、2005年に「発達障害者支援法」が定められました(その後、改正もされています)。
発達障害の定義
その中で、発達障害は下記のように定義されています。



ポイントは、「通常低年齢で発現する」
「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達症害、学習障害、注意欠陥多動性障害、その他のこれに類する脳機能の障害であって、その症状が通常低年齢で発現するもの」
発達障害は生まれつき



大人になってから(思春期から、何歳から)」のように、成長してから発達障害になるということはありません。
そう見える場合は、「大人になるまで、発達障害だと知らなかった(気づかなかった)」というケースなのです。
現在はある程度の支援体制が整い、発達障害の人は子どもの頃に早期発見されます。
そのためもあって、「発達障害は子どもの障害」というイメージを持つ方がいるのかもしれません。
発達障害の特徴は乳幼児期から見られ、子どもの頃(から)の早期発見と適切な療育・サポートによって、「生きづらさ」は少しずつ解消していきます。
ですが、現在大人である多くの人が子どもの頃には、「発達障害」の診断は一般的ではなく、適切な診断やサポートを受けられないまま、「変な人」「困った人」として見過ごされて来たケースが多かったのです(統合失調症など、別の診断名が付けられることもあったようです)。
そして、発達障害は、成長したからといって「治る」ものではありません。
大人の発達障害の人にも、適切な検査やサポートが必要です。
「発達障害」の名称変更とグループ分け
発達障害から名称が変わっている
実は、「発達障害」という名称は、現在は「神経発達症候群」という名称に変わっています。
2013年、アメリカ精神医学会が定める『精神疾患の診断と統計マニュアル(DSM-5)』が改訂され、その中で「発達障害」の名称と分類も変更されたのです。



名称や分類は変更されましたが、これまで使われてきた「自閉症」や「アスペルガー障害」といった診断名も、いまだに病院や一般社会で使用されており、非常にわかりにくい状況となっています。
HO(世界保健機関)が定めるICD(国際疾病分類)における名称も、2018年にDSM-5に合わせて「神経発達症候群」に変更されています。
発達障害の一種として広く知られている「アスペルガー」という診断名も、現在は正式ではありません。
発達障害に関する診断名は、新旧で次のような分類になっています。
発達障害に関する診断名は、新旧で次のような分類になっています。
- 自閉スペクトラム症【ASD】(旧・広汎性発達障害・〈アスペルガー症候群・自閉性障害などを含む〉)
- 注意欠如・多動症【ADHD】(旧・注意欠陥・多動性障害)
- 限局性学習障害【SLD】(旧・学習障害・LD)
- その他の発達障害(知的能力障害、コミュニケーション症群、運動症群)
発達障害は言こと聞か ない大人?大人の発達障害の人との接し方
大人の発達障害の特徴は、職場、家庭、子育てなど、あらゆる場面で発現することがあります。



職場でいじめられる、解雇される、家庭の維持が困難になる、自分ではそんなつもりはないのに子どもを虐待する、などという事例は、残念ながら「ない」わけではないのです。
…と書くと誤解を受けます。
「発達障害を持っていると、社会生活や子育てに絶対に不向きである」というわけではありません。
発達障害を持ちながら、職場で「普通に」働いたり、発達障害ではない人よりも活躍したり、子どもを育てたりしている人もたくさんいます。社会生活や子育ての困難の原因が、発達障害の可能性もあるということを知っていただけたらと思います。
繰り返し述べるとおり、大事なことは、「適切なサポートを頼ること」です。
そうすることで、仕事でも、家庭でも、その他社会生活でも、「あなたの発達障害」とうまくつき合っていけるようになります。
大人の発達障害の人との接し方
今後障害者の雇用が進むにつれて、大人の発達障害を持つ人と一緒の職場で働く機会も増えてくると思われます。
このような機会が訪れた時に、大人の発達障害を持つ人とどのように接したら良いのでしょうか。
まず、大事にしていただきたいことは
「今のその人の状態をそのまま受け入れる」という心がまえです。大人の発達障害の特性はもって生まれたものです。苦手な特性については「頑張ればできる」ことではありません。苦手なことをできるようにと強迫的に改めようとして自己肯定感を下げ、うつ病などの2次障害を引き起こしかねません。



特性は特性として受け入れ、その人の実力を発揮できるように環境を整えていく、という発想で支援していくことが大事となるでしょう。
仕事の進め方に自己流のこだわりがありますが、その方法で成果が上がり危険がないのであればそのままにすることも検討の余地があります。
その方法が危険につながったり、緊急性が高い状況にあるため仕事の進め方を変えてほしい場合には、直接声をかけ仕事の進め方を確認しましょう。
そのとき気を付けなければならないのが、大声や威圧的な態度で接してはいけないという点です。発達障害の人の仕事が進んでいなかったり、進め方が分からず困っているような場合には、何か困っているのではないかと声をかけてみましょう。
もし、困っているのであれば、その内容に応じて解決方法を教えてあげるのが望ましいのですが、このとき具体的な言葉で解決法を教えるようにしましょう。
その理由は大人の発達障害の人は、抽象的な指示を理解することが得意ではないからです。
このように、大人の発達障害を持つ人でも周囲のサポートにより、十分な仕事上の成果を上げることが可能です。
そのためには、やはり周囲の理解が必要です。大人の発達障害を持つ人の特性を理解して、それに合った方法で接するようにしましょう
大人の発達障害は言こと聞かない人の気持ちが分からないと言われ悩んでいるのはなぜ原因
大人の発達障害を持つ人が活躍できる企業は増えつつあります。しかし、それでも働きづらい職場にいたり、その仕事に向いていないなどの理由でうつ病などを発症してしまう人がいるのも確かです。
そのような心身の不調を感じたら、まず病院に行ってみましょう。
あいまいな表現が分からない
ASDのある人は、いわゆる「行間を読む」ことが苦手で、抽象的な表現をされると理解することが難しい場合が多いです。
また、想像して動くことが苦手なため、言われた以上のことに意識が向かないことがあります。
・「あの箱を持ってきて」⇒「あの箱」がどれか文脈から察することができない
・「明日はもう少し早く来て」⇒「もう少し早く」がどの程度(具体的に〇分か)か分からない
・「ちょっと出かけるから子どもを見ていて」⇒「見る」だけで、子どもが危ない状況になっても対応しない
思ったまま発言する
「正しいか間違っているか」など自分のルールに従って発言をするため、相手の気持ちを考えて言い方を変えることはなく、ストレートな物言いをすることが多いです。
また、「社会的なルール」や「暗黙の了解」「暗黙のルール」を理解することが難しく、場にそぐわない言動をすることがあります。
・髪型を変えた友人に対して、「その髪型はイマイチだね」
・過去のやり方に従う上司に対して「そんな効率の悪いことをする意味が分かりません」
・勤務時間中に長々と雑談をし続け、上司に「勤務時間外にしなさい」と指摘を受けて初めて、職場にふさわしくないのだと気が付いた
こだわりが強い
ASDの特性上、好きなことに没頭したり手順通りに進めることに強くこだわったりすることがあります。
没頭するあまり他のことに対応できなかったり、自分の知らない手順では先がどうなるか想像できず、恐れや抵抗を強く感じたりします。そのため、周囲から「融通が利かない」と思われることがあります。
・好きなゲームに熱中してしまい、仕事に行くのを忘れてしまった
・指示に従って作業を進めていたが、気になることを見過ごせず、つい違うことに時間を割いてしまった
・通勤する時はいつも同じ道で行かないと落ち着かない
大人の発達障害は言こと聞かない人の気持ちが分からないときの対処
普通に話しているつもりなのに、相手を怒らせてしまったり、「失礼だ」と指摘されてしまったりする場合、自分では悪いことを言っているつもりも悪い行動をとっているつもりもないのに、相手の気分を損なってしまうことがあります。
ASDやADHDを抱えていると現れやすい、いくつかのクセや特徴があります。
・ASD:目線が合わなかったり、声が大きすぎたり小さすぎたりする
・ADHD:貧乏ゆすりや手遊びなどの多動
解決策としては会話中にやるべき事とNGになることを知っておきましょう。
相手の気分を害さないためには、仕事の会話をする上での暗黙のルールを知っておくことが重要です。
意識し守っていくにはそれなりの我慢や努力が必要になってきます。
そもそも知らなければ努力の仕方も分かりません。
●話しかけられたら「はい」と返事をして体ごと相手の方を向く
●誰かを呼びかける声がしたらとりあえず声がしたほうを向く
●自分が呼びかけるとき場合にはまずは相手の名前を呼ぶ
●用件はいきなり切り出さずに相手の都合を確認してから話を話始める
●「ありがとうございました」や「申し訳ありません」を付ける
●最後まで言い切る 最後まで聞き切る
●うなづきやボディーランゲージなどの会話に必要なもの以外の余分な体の動きは避けるか控える
●相手と目線を合わさない そっぽをむかない
●話の流れを断ち切るような行動をしたり話の途中に違う話題を切り出したりする
●社内の仕事への評価・批判
大人の発達障害は言こと聞かない人の気持ちが分からないときに相談できる場所
発達障害者支援センター
生活から仕事に関することまで、発達障害に関する幅広い相談に対応しています。発達障害の診断が出ていなくても、発達障害の可能性がある方でも相談できる場所です。しかし支援内容は自治体により異なるため、近隣のセンターについて調べてから訪問すると良いでしょう。
障害者就業・生活支援センター
障害のある方の仕事と生活の両方の相談ができます。障害のある人の安定した自立生活を支援しており、「働けなくて経済的な不安がある」という深刻な相談から、「朝なかなか起きれない」という日常の細かい相談まで、さまざまな悩みごとに対応しています。
まず何をしたらよいのか困ったら、こちらに相談すると良いでしょう。
就労移行支援事業所
就
障害福祉サービスの一つで、安定して就労することを目指して支援を提供している機関です。
全国に3,500か所を超える事業所があり、サービス内容は事業所により様々です。
一般的には、通所する中で生活リズムの安定や職業スキルの習得をし、基本的に2年の期間内で就職を目指します。
まとめ
大人の発達障害は周囲の理解が必要ですが、なかなか難しいのも事実でしょう。そこで産業医の活用を検討してみてください。的確なアドバイスをしてくれるでしょう。産業医に職場環境について相談し、皆が働きやすい職場作りを目指してください。
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